日別アーカイブ: 2008年2月10日

二言のある医者

 「おぬし、確かよな?」「おお、武士に二言はない!」

 素晴らしいことである。しかし医者に二言はある。

 この変化の激しい世界において、以前の常識が引っくり返ることは稀ではない。医学の世界においても同様であって、10年前の常識が、じつは間違ってましたー、絶対にしないでね、ということは結構起こることである。

 今では常識の心臓や脳の急性期血管造影と血管拡張は僕の研修期の頃は本当に常識に反することだったし、内視鏡を使って手術をするなんぞ想像の範囲を超えることであった。つまり二言あるのは進歩するからなのだ。

 そんな大技でなくっても、エクセレントな小技もあるぞ。

 注射するときアルコール綿で消毒する。常識であるが実はこれはただの水でもよく、極言すれば拭かなくてもいいのである。

 皮膚の常在菌は皮膚の酸性環境で生存できる。体内は中性である。注射針で押し込まれても増殖できず、また中性でも増殖できる病原性のある黄色ブドウ球菌などは皮膚ではあまり増殖できず、注射により体内に入る菌数(わずか数個とのこと)ではすぐ免疫機構でやられてしまう。

 実際にアルコール綿と蒸留水で消毒したグループを比較した673人参加した結果では、ともに感染は認められなかったとのこと。

 すごい。傷の治療は乾かすのではなく、浸潤環境を保つためにサランラップを貼るほうが治癒がきれいで早いというのに続く目からウロコの知見である。

 常識を疑う好奇心と柔らかい頭、科学的な推察能力、実行できる決断力がないとこういうことは出来ない。

 二言のある医者はすごい実力者なのである。

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するのは好きですがされるのは嫌い